【第3回】地域×起業×宿泊:地域資源を活かした宿づくり

2026年8月22日、「いちき串木野ローカルチャレンジ塾2026」第3回講座を開催しました。
今回のテーマは、「地域×起業×宿泊:地域資源を活かした宿づくり」。

講師には、南九州市頴娃町(えいちょう)で「暮らしの宿 福のや、」をはじめとする宿泊施設を運営し、NPO法人頴娃おこそ会の理事長として地域づくりにも携わる瀬川知香さんをお迎えしました。
観光地ではない地域で宿を運営してきた経験をもとに、宿を始めたきっかけや空き家の活用、地域との関係づくり、事業を続けていくための考え方など、具体的な事例を交えながらお話しいただきました。

■ 地域に必要なものから考える宿づくり
瀬川さんが頴娃町へ移住したきっかけは、観光に関する仕事でした。
当初から宿を始めようと考えていたわけではなく、地域で活動する中で、「この町に今、足りないものは何だろう」と考えたことが宿づくりにつながったといいます。

当時、空き家再生や地域づくりに興味を持って訪れる人が増える一方で、地域には泊まれる場所が少ないという状況がありました。
そこで、滞在できる場所があれば、もっと地域に足を運んでもらえるのではないかと考え、宿の運営を始めました。
また、頴娃町は観光地ではないからこそ、地域の人が暮らす日常そのものを宿の魅力として生かしています。
宿の中だけで完結させるのではなく、地域の店を訪れたり、人と出会ったりすることも含めて滞在を楽しんでもらう。
地域にあるものに目を向けることが、宿づくりの出発点になると学びました。

■ 空き家再生は、地域との関係づくりから
頴娃町では、地域づくり団体のメンバーとともに、空き家を活用した宿や拠点づくりにも取り組んでいます。
空き家があっても、所有者にとっては「どんな人が使うのか」「近所に迷惑をかけないか」といった不安があり、簡単に貸し借りにつながるとは限りません。
そこで瀬川さんたちは、所有者と使いたい人の間に入り、お互いの思いや使い方を確認しながら活用を進めています。
改修には地域内外のさまざまな人が関わり、DIYなども取り入れながら、みんなで空き家を再生してきた事例も紹介されました。
建物をきれいにするだけではなく、その場所で長く活動していくための信頼をつくること。
地域で宿を営むうえで、人とのつながりが欠かせないことを教えていただきました。

■ 小さく始めて、自分に合った形で続ける
宿泊施設というと、大きな資金や多くの人手が必要なイメージがありますが、瀬川さん自身も、最初から大きな規模で始めたわけではありません。
できる範囲から始め、必要な部分には専門家の力を借りながら、少しずつ形にしてきました。
現在も、子育てやほかの仕事と組み合わせながら宿を運営しており、自分の生活に合わせて続けられることも宿の特徴の一つだと話しました。

一方で、地域の交流の場をつくるだけでは、建物を維持していくことはできません。
宿泊や体験など、きちんと収益につながる仕組みをつくることも必要です。
大きく始めることよりも、自分が無理なく続けられる形を考える。
子育てやほかの仕事と両立しながら小さく事業を始めることも、一つの起業の形です。
規模の大きさにとらわれず、自分に合ったスタイルを見つけることの大切さを、瀬川さん自身の経験を交えながら伝えました。

■ 地域にあるものを掛け合わせ、滞在の魅力をつくる
頴娃町では、宿泊だけでなく、地域の主要産業である農業と観光を掛け合わせた体験づくりにも取り組んでいます。
体験をつくる際に意識しているのは、特別なことを一から用意するのではなく、普段の仕事や暮らしに少し手を加えること。
受け入れる地域の人にとっても、無理なく続けられることを大切にしています。

また、体験の内容だけでなく、「どこで体験するのか」「誰が伝えるのか」によって、体験の価値も変わると話しました。
地域の風景の中で、実際にそこで暮らし、働く人の話を聞くことで、その場所ならではの体験になります。
農業や観光、空き家など、地域にあるものを掛け合わせることで、その地域ならではの魅力につながっていく。
自分たちの地域にあるものに目を向け、それぞれの魅力をどう生かしていけるのかを考えるきっかけとなりました。

■ それぞれの視点で捉えた学び
講座後には、塾生一人ひとりが印象に残ったことや、自分の活動に生かしたいことを共有しました。
宿泊事業は忙しいイメージがあったものの、子育てやほかの仕事と組み合わせながら続けられることに驚いたという声や、宿をつくるだけではなく、地域の人との信頼関係が大切だと感じたという声が聞かれました。

また、宿泊と地域の体験を組み合わせることに可能性を感じたという声や、「自分はこの町に住んでいるけれど、まだ知らないことが多い」と気づいた塾生もいました。
宿泊に関心がある人だけでなく、それぞれが自分の仕事ややりたいことに置き換えながら、地域との関わり方を考える時間となりました。

■ トークセッション:地域で宿を続けるために
後半のトークセッションでは、宿泊施設の種類や物件の選び方、集客、運営方法などについて、塾生からさまざまな質問が寄せられました。

初めて宿を始める場合には、小さな規模からスタートする方法があることや、古い建物を活用する際には、専門家に確認しながら必要な部分を整えていくことなど、実際の経験をもとにした話が紹介されました。
集客についても、まずは地域の人に宿を知ってもらったことや、どんな人に来てほしいのかを考え、その人に届く方法で発信してきたことが共有されました。

また、日々の運営では、すべてを一人で抱え込まず、必要なときには地域の仲間の力を借りているという話も。
宿を続けていくためには、設備や仕組みだけではなく、周囲とのつながりも大きな支えになることが伝わるトークセッションとなりました。

■ グループワーク:学びを自分の挑戦につなげる
講座の最後には、今回の学びを自分の活動にどう生かせるかを考えるグループワークを行いました。
地域の食や体験を生かした場所をつくりたいという声や、まずは自分の住んでいる地域の魅力をもっと知りたいという声、地域の人との関わりを増やしていきたいという意見など、それぞれの視点から思いを共有しました。

「自分の地域のことを、意外と知らないことに気づいた」
「まずは地域の人とつながって、もっと地域のことを知っていきたい」
「宿泊と体験を組み合わせることで、地域ならではの取り組みにつながりそう」

そんな声も聞かれ、互いの考えを聞きながら、自分だけでは気づかなかった地域の見方や、これからの活動につながるヒントを得る時間となりました。

■ 自分の地域を知ることから、次の一歩へ
今回の講座を通して見えてきたのは、地域での活動を続けていくためには、人とのつながりや地域との関係を大切にしながら、事業として継続できる仕組みをつくることも必要だということです。

小さくても収益を生み出し、自分の暮らしや状況に合った、無理なく続けられる形をつくること。
地域に何があるのか。
どんな人が暮らしているのか。
そして、自分ならそこに何を掛け合わせられるのか。

宿づくりというテーマを通して、塾生一人ひとりが自分の地域を改めて見つめ、自分らしい挑戦の形について考える講座となりました。